斜視の話を簡単にしますが、私は斜視の専門家ではありません。
当院では、西村医師が斜視を専門としていますので、詳しい相談をご希望の方は、西村医師の受診を予約してください。
斜視を専門としている眼科医は、それほど多くはありません。簡単な治療は普通の眼科専門医でも構いませんが、複雑なものや、最初の治療方針を決めるのは、斜視専門医の方が良いと思います。
さて、斜視とはどういうものでしょう。
※ 人間は左右の眼で同時に一つのものを見ています。
☆ 斜視では、片方の目の向く方向がずれるために、両目で同時に同じものを見ることができません。
・ 斜視には普通の斜視、どの方向を見ても目の位置のずれかたが同じものと、
眼球を動かす脳神経の異常によって突然目の動きの一部が悪くなるものがあります( 麻痺性斜視 )。
・ そのため、突然に斜視になった場合は、急にものが二つに見えるようになることがあります。( 複 視 )
これはものがぼやけて見えることとは違います。1本の鉛筆が2本に見えたり、道路のセンターラインが2本に見えたりするものです。
・ これとは違って、子供に見られるような普通の斜視では、二重に見えることを防ぐため、脳の働きで、片方の目だけで、ものを見ているような感覚にしてしまうこともあります。
☆子供の斜視
子供に多いのは内斜視と間欠性外斜視です。
・ 内斜視は片目が内側に寄ってしまうもので、生後6カ月未満から見られる、先天内斜視と、遠視が強いために起こる調節性内斜視があります。
調節性内斜視は少し年齢がいって、1歳〜1歳半ごろからおこるものです。
1) 先天内斜視は手術が必要ですが、いつやるべきか、意見は必ずしも一致していません。
早い方が良いことはたしかですが、手術には全身麻酔が必要です。専門医に相談してください。
2) 調節性内斜視は遠視の程度を正確にはかって、メガネをかけるのが治療の基本です。
それでも不十分な場合には手術を考えることがあります。弱視を合併していることもありますので、専門医の診察が必要です。
3) 本当は斜視がないのに、一見、斜視に見えることがあります。
偽斜視ですが、偽内斜視( ぎないしゃし )が多いと思います。
小さな子供では、まぶたの影響で、黒目の内側(鼻側)の白目が見えないことがあります。
そのため、一見、目が内側に寄っているように見えるのです。
・ 眼科医は、ペンライトで正面から目を照らして、光の反射が、黒目の真ん中にあるかどうかを確認します。
家庭でもできますが、写真を見るのも一つの方法です。正面から撮った、ある程度大きな顔写真が必要ですが、目の位置のずれが確認できます。
眼科を受診する時にも、写真を持ってきてもらうと良いと思います。最近はスマートフォンの画像を見せる方が多いようです。
4) 間欠性外斜視は、めずらしくありません。
いつもは両目でまっすぐ見ているのですが、緊張がゆるんでぼんやりすると、片目が外へずれます。
ずれの程度と、頻度が問題になります。程度が強い場合は手術でなおすこともあります。経過観察が必要です。
※ 斜視があることによって問題になるのは、ものを見る、目の働きが正常ではなくなることです。
・ 斜視に関係するのは、両目でものを見る働きで、両眼視機能と言いますが、おおざっぱに言えば、立体感、遠近感のことと考えて良いと思います。もちろん、片目でもこういう働きが全くないわけではありませんが、両眼で見る働きに比べれば、少し不良です。
・ 内斜視では、この両眼視機能という働きが、うまく発達できなくなってしまいます。
間欠性外斜視では、それまで正常だった両眼視機能が、ずれの頻度が高くなると、その働きが低下してしまうことがあります。
・ 斜視の治療で、両眼視機能が改善するのは、すべてではありませんが、できるだけ努力をしてみる必要があります。
※ 斜視による問題のもう一つは、目の位置がずれることによる、外見上の問題があります。
軽い程度なら、普通の人にはわかりません。眼科医が見て、気がつくだけです。
大きく、ずれている時には、本人も気にすることがありますので、手術を考えます。問題は、子供の手術ですので、全身麻酔が必要なことです。
麻酔の危険はあまり大きくありませんが、体の検査が必要です。短期間の入院が必要ですので、夏休みなどの時期にやることが多いようです。
☆ 大人の斜視
大人の斜視では、外見を気にされて手術をすることがあります。
また、近くの仕事を長時間する場合に斜視があると、目が疲れることがあります。
このような場合に眼の位置を補正するプリズム眼鏡をかけると、症状が軽くなることがあります。
メガネは一般的にそうですが、眼鏡店で作るのでなく、眼科専門医で処方箋をもらうことが必要です。プリズム眼鏡は特に専門医の診察が必要です。
・ 高齢者では上下斜視が増えます。この場合ものが二つに見える症状が出ることがあります。これに対しても、プリズム眼鏡をかける方法があります。
※ 一つ気をつけなくてはいけないのは、急に眼の位置がずれて物が二つに見える場合、その中には、眼球を動かす筋肉を支配している、脳神経の麻痺で起こるものがあります。
多くはありませんが、頭の中の病気、脳腫瘍や脳動脈瘤、脳出血 が原因のことがあります。
ある日突然に物が二重に見えるようになったら、早めに眼科医の診察を受けてください。
☆ ものが二重に見えることを複視と言いますが、患者さんの中には、視力が落ちて、ものがかすんではっきり見えないことを、二重に見えると訴える方がいます。
この場合には、眼鏡をかけると二つに見えなくなります。
複視というのは、ものがぼやけるのではなく、はっきりとしたものが二つ並んで見えることですので、お間違えのないようにしてください。
☆ 弱視は、目には特別な病気がないのに、
子供の視力の発達が十分でない状態です。
・ 赤ん坊の時は、すぐ近くしか見えていませんが、年とともに遠くが良く見えるようになり、徐々に視力は上がってきます。
・ 大体 3歳を過ぎると、視力の発達は十分になるのが普通ですが、視力検査がうまくできないこともありますので、3歳半から4歳ぐらいで、視力を判断するのがよいと思います。
ただし、それ以前でも、弱視をおこしやすい状態を検査で見つけることはできます。心配な場合は、眼科医に相談してください。
・ 弱視を起こす原因はいくつかあります。
比較的多いのは、遠視が強いために起こるもので、片目だけに起こる場合と( 不同視弱視 )、両目に起こるものがあります。
乱視が極端に強くても、弱視になることがあります。
これらは、いずれも眼鏡を掛ける必要があります。
片目だけが悪い場合には、良い方の目をアイパッチなどで隠して、無理やりに悪い方の目でものを見るようにする治療があります。
アイパッチの代わりに、目薬を使う方法もあります。
また、状況によっては眼鏡を装用するだけで経過を見ていくこともあります。
専門医の指示に従ってください。
・ 3歳児検診や、就学児検診で見つかることが多いのですが、そのぐらいの年齢なら、視力が回復する可能性は十分あります。
できれば、就学児検診の前に見つけたいと思います。
・ 一般的には10歳を過ぎてしまうと、治療の反応が悪くなると言われています。なるべく早めに見つける必要があります。
片目だけが見えない場合には、普段の生活でも気がつきません。3歳半から4歳ごろには、一度眼科の診察を受ける必要があります。
☆ 弱視の中に、目を隠すことが原因で起こるものがあります。
( 視性刺激遮断弱視 )
小さな子供には眼帯をしてはいけません。
よく、目の病気があると眼帯をしなくてはいけないと考える方がいますが、
眼帯は一般的には全く必要はありません。
赤ん坊から小学校低学年までの子供には
眼帯をしてはいけません。
短期間隠しただけでも弱視発症の危険が出てきます。