みかさんの絵 1

海の振動

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「 海の振動 」

    120 × 90 cm  ぐらい ( フレーム全体の大きさです ) の大きな作品です


 むらかみ みか さんの、動物を描いた作品の一つ。

 ウミガメですが、生物学的にどうこう言うのは無駄です。みかさんも、なにも考えていないと思います。

 
  海の振動、というのは、すごい表現ですね。

 いかにも、大きなウミガメが大海を泳ぐさまを表していて、適切です。


  ドリトル先生の「 秘密の湖 」に出てくる、ドロンコも大きな亀でした。妻のベリンダと一緒に大西洋を泳ぎ渡ったんでしたっけ。

 振動という言葉から連想するのは、「 航海記 」 の中のエピソードです。

 大ガラス海カタツムリ が、岩にはさまれた自分のしっぽを動かして、ロングアローの住んでいるクモサル島に地震を起こした、という話 を思い出します。

 そう言えば、まず最初に、紫ゴクラクチョウがロングアローの行方不明になったことを、ドリトル先生に知らせに来たんでした。

 チープサイドにいじめられて、泣いたゴクラクチョウの名前はなんて言いましたか。

 そうそう、ミランダです。






 
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 ウミガメの周りにはエンボスで円形の波紋がきざまれていて、カメの中には水草の葉と金魚が描かれています。

   水草の紋様はモダンで大胆なものです。

 中央に金魚が1匹いますが、他にも2匹の尾が見られます。

 対象として描かれたウミガメの形態は、我々の世界に開かれた窓のような役割を果たしていて、その中に別な世界が広がっています。

    この手法は、みかさんがよく使うものです。

 絵の中には見えていませんが、その世界のすべてが背後に広がって存在しているように感じられます。

 「 不思議の国のアリス 」 で、ウサギの穴から落ちると、別の世界に入っていくようなものですね。

   作品は全体に、静かで落ち着いていて、深みがあります。


 
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    フレームは銀色の少し細めのものです。

 これだけ大きな作品ですと、普通はもっと幅広で厚いフレームを選ぶのが常道です。

 物理的にも、あまり細いと全体の重みに耐えきれませんし、絵とのバランスも悪くなってしまいます。

 でも、この作品のイメージを表現するのに、あえてこの幅を選んだわけで、この額装はバランスよく、上手に入っていると思います。

 彫られている模様は青海波のようで、大海を泳いでいるウミガメにふさわしいと、気にいっています。


 

マグノリア ロマンス

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「 マグノリア ロマンス 」


恐竜を題材とした、みかさんの作品はいくつかありますが、初めてみたのがこれです。

 
 ティラノサウルス だと思いますが、学術的な話は、これまた意味のないことですね。

  一目で気に入りました。 これも 「 海の振動 」 と同じくらいの大きな作品です。


  恐竜が後ろを振り向いていますが、左側から花びらが流れてくるように、ちぎられた色紙が貼られています。

  恐竜の不安気に見上げる感じ、その目がいつも秋を思わせ、落ち葉のようにも思ってしまいます。

 magnolia は辞書をひくと、モクレンとか泰山木のような樹木の総称と書いてあります。

 ただ、春から初夏の花ですから、秋の雰囲気という感じ方は変かもしれませんが、仕方がありません。

  なんだか、滅亡の時代にいたる恐竜の予感を感じさせる、というのは言いすぎでしょうか。

  ウォルト ディズニーの映画 「 ファンタジア 」では、ストラヴィンスキーの音楽 「 春の祭典 」に合わせて、恐竜時代を描いています。

 その中で、恐竜( ブロントサウルス )が、ふと長い首を持ち上げて、不審げにかなたを眺める情景を思い出します。

 
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  恐竜の体の中には マグノリア の花弁や葉が描かれています。周囲にも枝葉がエンボスしてあります。上の方はうろこ雲のようにも見えます。

 スペイン の マグノリア は 日本とは違うかもしれません。

 マグノリア の花言葉はいくつかありますが、 ジーニアス英和には 「 威厳 」 と載っています。 ティラノサウルス に相応しいですね。

 もっとも、 T-rex は暴君竜と呼ばれています。

 でも、みかさんの絵を見ていると、この恐竜はむしろ、はかなげな印象があります。家の中では威張っていても、内実は弱さを隠している父親のようです。

  これは、完全に蛇足で、絵からは離れてしまいました。
 
   全く個人的な感覚なのですが、この恐竜の絵の感じは、「 COM 」に連載されていた漫画を思い起こさせます。
 はっきりと何がとは言えませんが。 




 

十五夜

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「 十五夜 」  

      50 × 45 cm  ぐらいの小さな作品です ( フレームの大きさ )


  これは面白いですよね。上の真面目な2作とは全く違って、ちょっと気分転換です。

  中にはウサギが沢山。それもひと癖ありそうで、うさんくさいやつらです。

    「 十五夜 」 というタイトルですが、上にあるのは三日月のような形です。

   luna  は月の女神ですが、lunatic というと、気が狂ったというような、あまり良い意味では使われません。

  オオカミ男ではありませんが、月は人を狂わせるというイメージが西洋にはあるようです。

 この絵を見た時に、lunatic という言葉がぱっと浮かびました。
 
 「 アリス 」 の中に三月ウサギ、という登場人物? がいます。三月のウサギのように気が狂っている、という英語の慣用表現から作られたそうです。

     ここのウサギも三月ウサギの仲間のようです。

  額装も、この絵なら、できるだけ派手でポップな感じと最初から決めていました。


 普通は、絵の色合いと似たような色のフレームに合わせることが多いですね。
 あるいは、よく使われるシルバーとかゴールドは、比較的どんな絵にでも合うのがよいところです。

 ここで額装したように対照的な色合いで合わせるのも面白いものですが、おとなしい絵では難しいですね。